ジャニスは死んだ

ジャニスは死んだ

はじまり

気がついたらソレはそこにいた。
普段は息を潜めているくせに、何かの拍子に襲ってくる。
その正体不明の何かに、私は”ガタガタ”と言う呼び名をつけた。
ソレが襲ってくると、私の体は意味もなく震えはじめ、
うまくしゃべる事も出来なくなり、頭の中はまっしろで、
手のひらには嫌な汗をかき、勝手に涙がボロボロと出る。
喉には何か、正体不明の塊が居座って、息がつまるような錯覚に囚われる。

最初のうち、緊張やストレスの末に現れたガタガタ。
時間が経つにつれ、ソレは脈絡なく襲ってくるようになった。

私はガタガタに負けた。支配されつつあった。

車の運転も怖くなりはじめ、会社で突然泣きそうになったりし始め、
これはもう、自分だけで治せるものではないと自覚した。

私を襲うガタガタは、ネットで調べると、パニックディスオーダーの症状に似ていた。
色々調べた結果、自分にはプロの手が必要かもしれないと思うようになった。

悩んだ。パートナーに迷惑をかける。自分の子にも迷惑をかける。
もしも、パートナーの友人達に、私がこんなだとバレてしまったら?
悩んで、泣いて、その合間にもガタガタは当然やってきて、
自分の実家とトラブルになり、
唯一最後の味方であると思っていた母に裏切られ、罵られた時、私の何かが壊れた。
それでも、パートナーは私を見捨てなかった。

とある土曜日、私はパートナーにお願いして、メンタルクリニックへ連れていってもらった。
ひとりで門をくぐる度胸はなかった。


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